小太郎 ー涸れ井戸の謎ー2

小太郎 ー涸れ井戸の謎ー2

裏のご隠居,俊祐は年齢不詳の賢者です.

ご隠居とは自立して自給自足で生活する仲間です.その生きざまに尊敬の意味を込めてご隠居と呼ばれています.

今はエノキの森の裏,荒船の森の外れで,小綬鶏の森近くの道祖神の所にある祠を仮住まいにしています.梅の谷とは随分と離れたところです.

 

 光太郎 行くぞ

 小太郎 えっ

 温子 私も

 治 僕も

 

 僕らは皆キラキラが大好きです.ピカッ,キラキラ.たまりません.

 

 皆で井戸に向かってジャンプ

 ピカッ.ピカッ.ピカッ.ピカッ

 竜之介 僕も,ジャンプ

 ピカッ

 押すなよ

 井戸の中何もないよ

 ほんとだ

 ほんとだ

 ほんとだ

 もっとよく見ようよ

 ワーッ

 落っこった

 ワーッ,ワーッ,ワーッ,ワーッ

 

 小太郎 あれ,明るい

 温子 眩しい

 竜之介 ここどこ

 光太郎 梅の谷みたいだけれど

 小太郎 あっ,井戸から水が出ている

 温子 大王池もあるよ

 治 荒船川も

 光太郎 見渡す限りお花畑だ

 竜之介 静かだね

 

大王池の水面は碧空を映し,森を映し,谷を映し,梅の花々を映し,ひそやかに,明るい光を映しています

紅梅,白梅の花香る光の谷,草花の咲きほこる瞼に優しい谷

新緑の木々が森にまぶしく,どこまでも続く明るい木々の森

雲一つない青空

でも静寂の世界,暖かな静寂の世界

井戸から溢れでる一滴一滴の雫,聞こえてくる水源の囁きが耳にも優しい

 

いったいどーなってんの

鳥もいない

虫もいない

モグラもいない

雲もない

風もない

碧い空だけ

水が流れ続けている

いつまでも,変わらずに

 

ご隠居の所へ行こう

ご隠居に聞いてみよう

禁断の森を通り抜け

水を満々と湛えた大きな池,赤岩湿地帯

山桜橋にも荒船川の流れが

杣道にも水が

エノキの森にも水が

アッ!

ご隠居だ,ご隠居だ

ご隠居

ご隠居

ご隠居